東南アジアを代表するスーパーアプリ、Grabが2024年第3四半期の決算を発表しました。今回の決算では、収益の増加、黒字化の達成、調整後EBITDAの過去最高記録など、目覚ましい成果が多数報告されています。
この記事では、Grabの決算内容を初心者にも分かりやすく解説し、その成長の背景と今後の展望を深掘りしていきます。
全体的な業績ハイライト
まずは、Grab全体の業績について見ていきましょう。
- 収益:前年同期比17%増(為替変動の影響を除くと20%増)の7億1600万ドルを達成しました。これは、すべての事業セグメントで収益が伸びたことによるものです。
- オンデマンドGMV:前年同期比15%増(為替変動の影響を除くと18%増)の47億ドルに達しました。これは、Grabの主要事業であるデリバリーとモビリティの取引額が増加したことを示しています。
- 利益:1500万ドルの黒字を達成しました。前年同期比で1億1400万ドルもの改善です。これは、Grabが収益性を高め、コスト管理を徹底してきた結果と言えるでしょう。
- 調整後EBITDA:前年同期比6200万ドル増の9000万ドルを記録し、過去最高となりました。調整後EBITDAは、Grabの事業の収益性を測る上で重要な指標です。11四半期連続で改善しており、事業の成長が着実に利益につながっていることがわかります。
- 営業キャッシュフロー:3億3800万ドルを計上しました。これは、事業活動を通じて安定したキャッシュフローを生み出していることを示しています。
- 調整後フリーキャッシュフロー:過去12ヶ月で7600万ドルとなりました。これは、Grabの事業活動から生み出される現金をより正確に捉えるための指標です。
- 現金流動性:61億ドル、純現金流動性は58億ドルを保持しており、財務基盤が安定していることがわかります。
- 月間取引ユーザー数(MTU): 4200万人に達し、多くのユーザーがGrabのサービスを利用していることがわかります。
これらの指標から、Grabが成長と収益性の両立を達成していることが明確にわかります。
セグメント別業績の詳細分析
次に、各事業セグメントの業績を詳しく見ていきましょう。
デリバリー事業
- 収益:前年同期比13%増(為替変動の影響を除くと16%増)の3億8000万ドル。
- GMV:前年同期比12%増(為替変動の影響を除くと16%増)の29億6500万ドル。
- セグメント調整後EBITDA:GMVの1.8%。前年同期の1.3%から改善しており、収益性が向上しています。
- 広告収入:デリバリーGMVの1.6%に増加。前年同期の1.1%から大幅に増加しており、広告がデリバリー事業の収益に貢献していることがわかります。
- セーバーデリバリー:デリバリー取引の**32%**を占めるまで成長し、コスト効率向上に貢献しています。セーバーデリバリーとは、配達時間を少し長くすることで、配送料を抑えることができるサービスです。6割がバッチ処理(複数の注文をまとめて配達)されています。
- セーバーデリバリー利用者の取引頻度:セーバーデリバリー採用後6ヶ月間の平均取引頻度が、採用前6ヶ月間の平均取引頻度と比較して12%増加しています。これにより、ユーザーエンゲージメントも高まっていることがわかります。
デリバリー事業は、広告収入の増加とセーバーデリバリーの普及によって収益性と効率性を高めています。
モビリティ事業
- 収益:前年同期比17%増(為替変動の影響を除くと20%増)。
- GMV:前年同期比20%増(為替変動の影響を除くと24%増)の16億9400万ドル。
- モビリティMTU:前年同期比23%増。多くのユーザーがモビリティサービスを利用していることがわかります。
- MTUあたりの取引数:前年同期比7%増。ユーザーの利用頻度が高まっていることを示しています。
- セグメント調整後EBITDA:GMVの8.8%。前期比で改善しており、収益性が向上しています。
- 高価値モビリティ:GMVが前年同期比30%増。より快適で便利な移動手段を求めるユーザーが増加していることがわかります。高価値モビリティには、事前予約、プレミアム車両、優先配車サービスなどが含まれます。
- ドライバーの供給状況: 月間アクティブドライバー数は前年同期比13%増と、ほぼコロナ前の水準まで回復しました。ドライバーの確保が進み、需給バランスが改善していることがわかります。
- サージ価格:前年同期比で12%減少。ドライバー供給の改善により、需要超過時の価格上昇が抑制されています。
モビリティ事業は、高価値モビリティの利用拡大とドライバー供給の改善により、成長を加速させています。
金融サービス事業
- 収益:前年同期比34%増(為替変動の影響を除くと38%増)の6400万ドル。
- セグメント調整後EBITDA:前年同期比27%改善し、マイナス2600万ドル。損失は減少傾向にあるものの、まだ赤字です。
- 貸付残高:前年同期比81%増の4億9800万ドル。貸付事業が急速に成長していることがわかります。
- 総貸付額:前年同期比38%増、前期比13%増の5億6700万ドル。
- デジタルバンクの顧客預金:前年同期比3倍増の11億ドル。デジタルバンク事業が急速に拡大していることがわかります。これは、顧客数が増加したことと、GXS銀行で「Boost Pocket」という定期預金商品が開始されたことによるものです。
金融サービス事業は、貸付事業の拡大とデジタルバンクの成長によって収益を大きく伸ばしていますが、まだ赤字の状態です。
その他事業
- 収益:100万ドル。
- セグメント調整後EBITDA:前年同期比7%増の0.4百万ドル。
その他事業は、まだ規模は小さいですが、着実に成長しています。
成長を支える要因
今回の決算で、Grabが大きく成長している要因として、以下の点が挙げられます。
- 東南アジア市場の成長: Grabが事業を展開する東南アジア地域は、デジタル化が進んでおり、Grabのサービスに対する需要が高まっています。
- ユーザー数の増加: Grabのアプリを利用するユーザー数が4200万人に達し、サービスが地域に浸透していることを示しています。
- サービスの多様化: デリバリー、モビリティ、金融サービスなど、多様なサービスを提供することで、ユーザーの様々なニーズに応えています。
- テクノロジーへの投資: データ分析やAIを活用することで、サービスの効率化とユーザー体験の向上に取り組んでいます。
- コスト効率化: 各事業セグメントでコスト削減に取り組み、収益性の向上を図っています。
- パートナーとの連携: ドライバーや加盟店との良好な関係を築き、サービスの質を高めています。
今後の展望
Grabは、今回の好調な決算を受け、2024年通年の収益と調整後EBITDAの見通しを引き上げています。今後も、東南アジア市場におけるスーパーアプリとしての地位を確立し、持続的な成長を目指していくでしょう。
まとめ
今回の決算では、Grabが成長と収益性の両立を達成し、東南アジアにおけるスーパーアプリとしての地位を確固たるものにしていることが明確になりました。デリバリー事業とモビリティ事業は成長を加速させ、金融サービス事業は潜在的な成長力を示しています。また、調整後EBITDAは11四半期連続で改善し、2度目の四半期黒字を達成しました。今後も、Grabの動向から目が離せません。
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