Arm Holdings 第2四半期決算:AIとデータセンターの成長が牽引する力強い業績
財務ハイライト
- 収益増加: 2025年度第2四半期の総収益は8億4,400万ドルで、前年同期比5%増加しました。 これは、ガイダンスの上限を上回る結果となりました。 ロイヤリティ収入はArmv9の広範な採用により過去最高を記録し、5億1,400万ドルに達しました。 一方で、ライセンスおよびその他の収益は、複数の大規模ライセンス契約の収益認識のタイミングと規模の通常の変動と、バックログからの貢献により、予想通り前年同期比15%減少し、3億3,000万ドルとなりました。第2四半期の予約は予想通り堅調でした。
- 利益率低下: 研究開発費の増加により、営業利益率は前年同期の47.6%から38.6%に低下しました。
- 堅調なキャッシュフロー: 過去12か月間のフリーキャッシュフローは4億7,500万ドルでした。これは、特定の取引における支払い構造や税金の支払タイミングによる運転資本の変動の影響を受けています。
事業ハイライト
- Armv9の普及: Armv9は、スマートフォン、クラウドコンピューティング、自動車など、さまざまな分野で採用が進んでいます。 Armのロイヤリティ収入の約25%を占めており、前年の10%から大幅に増加しています。 特に、Appleの最新iPhone 16への採用は、Armv9の普及を加速させ、スマートフォン向けプロセッサのロイヤリティ収入を大幅に増加させました。MediaTekの新しいDimensity 9400プロセッサーなど、一部の次世代スマートフォンアプリケーションプロセッサーは、Armの最新のArmv9 CSS for Clientに基づいています。 CSS for Clientにより、以前のプラットフォームと比較して、ピークパフォーマンスが36%向上し、AI推論パフォーマンスが59%向上しました。 これらの改善により、ロイヤリティ率とチップあたりの収益が増加しています。
- コンピューティングサブシステム(CSS)の成功: CSSは、チップ設計のパートナー企業にとって、市場投入までの時間短縮とコスト削減を実現するソリューションとして、スマートフォンやデータセンター向けチップの設計において採用が拡大しています。 Armは、今年度に入り、CSSのライセンス契約数を2倍以上に増やしており、Microsoft Azure Cobalt 100やMediatek Dimensity 9400チップなど、CSSを採用した製品がすでに市場に登場しています。
- AI分野におけるパートナーシップ: Armは、Metaと協力して、Llama 3.2言語モデルをArmベースのチップ向けに最適化しました。 これにより、処理時間の短縮とユーザーのプライバシー保護の強化が実現しました。
- データセンター事業の成長: Microsoft、Google、Amazon Web Services(AWS)の主要なクラウドサービスプロバイダー3社全てが、Armベースのデータセンターシステムを提供しています。 MicrosoftのAzure Cobalt 100やGoogleのAxionチップは、Armの費用対効果と省エネ性能の高さを示しており、GoogleのAxionチップは、同等のx86ベースのインスタンスと比較して、価格性能比で最大65%、エネルギー効率で60%向上しています。 NVIDIAは、高性能アクセラレータとエネルギー効率の高いArmベースCPUを統合したGrace Blackwellスーパーチップの出荷を予定しており、これもArmのデータセンター事業における勢いを示すものです。
役員コメント分析
Rene Haas CEOは、決算発表の中で、「高性能Armv9およびCSSコンピューティングプラットフォームへの需要は、引き続き予想を上回っており、ライセンスおよびロイヤリティ収入の成長を加速させています」と述べています。 また、「AI everywhereは、クラウドからエッジまで、Armコンピューティングプラットフォームに新たな機会を生み出しています」とも述べています。
これらのコメントから、Armは、AIとエネルギー効率の高いコンピューティングソリューションへの注力が、今後の成長の鍵となると考えていることが分かります。 また、Armは、Armv9とCSSが、この成長を牽引する重要な役割を果たすと確信しているようです。
今後のガイダンス
- Armは、2025年度第3四半期の収益を9億2,000万ドルから9億7,000万ドルと予想しています。これは、前年同期比で15%の増収となる見込みです。
- 高性能でエネルギー効率の高いコンピューティングソリューションに対する需要が、第3四半期の成長を牽引すると予想されています。
- 研究開発投資は計画通りに進捗しており、2025年度第3四半期の営業費用は約5億2,500万ドルとなる見込みです。
- 2025年度通期の収益予想は、前年同期比18%から27%増の38億ドルから41億ドルとしており、前回ガイダンスから変更はありません。
- 売上ガイダンスの中間点では、通期のロイヤリティ収入は10%台後半の成長が見込まれています。
- スマートフォンからの収益成長は、Armv9ベースのチップが今後数四半期にわたってCSSの普及に伴い、ミックスの割合が大きくなることで牽引されると予想されています。
- クラウドと自動車分野でのシェア拡大も継続すると予想されています。
- 顧客からのフィードバックに基づき、第3四半期と第4四半期はネットワーキング分野で順調な成長が見込まれる一方、IoT分野は来年度まで回復しない見通しです。
成長要因分析
Armの2025年度第2四半期の業績は、AIとエネルギー効率の高いコンピューティングソリューションへの注力が、複数の業界で成果を上げていることを示しています。
- Armv9の採用拡大は、Armの戦略が、エネルギー効率の高いAI対応テクノロジーに焦点を当てていることの証左です。
- CSSの普及は、チップの複雑化が進む中で、開発期間の短縮とコスト削減を実現するというArmの取り組みが大きな優位性をもたらしていることを示しています。
- データセンター市場では、エネルギー効率の向上とコスト削減が重要な課題となっており、Armベースのソリューションは、これらの課題に対する効果的な解決策として注目されています。
- 自動車分野では、ADAS(先進運転支援システム)やIVI(車載インフォテインメント)など、AIの活用が急速に進展しており、Armは、これらの分野においても、その存在感を高めています。
感想
Arm Holdingsの2025年度第2四半期の決算は、AIとデータセンターの成長が同社の業績を力強く牽引していることを示す、非常に印象的な内容でした。Armv9アーキテクチャの採用拡大と、それに伴うロイヤリティ収入の増加は目覚ましいものがあり、AppleのiPhone 16への採用は、Armv9の普及をさらに加速させる起爆剤となり、モバイル市場におけるArmの優位性を不動のものにするでしょう。
CSSの需要の高まりは、チップ設計の複雑化と開発コストの増加に対応するArmのソリューションが、市場のニーズを的確に捉えていることを示しています。CSSの採用拡大は、Armの長期的な収益成長を支える重要な柱となる可能性を秘めています。
データセンター市場においても、主要なクラウドサービスプロバイダー3社全てがArmベースのシステムを提供するに至ったことは、Armのエネルギー効率の高いコンピューティングソリューションが、性能とコストの両面で、x86アーキテクチャに対する優位性を確立しつつあることを示唆しています。
AIの未来を支える上で、Armの役割はますます重要性を増していくでしょう。AI対応デバイスの普及に伴い、より多くのコンピューティング能力が求められる中、Armのエネルギー効率の高いソリューションは、 環境負荷を低減しながら、AIの進化を加速させる上で、欠かせない存在となるはずです。
Arm Holdingsは、堅調な収益成長、Armv9およびCSSプラットフォームへの高い需要、AI、自動車、データセンターセクターにおけるパートナーシップの拡大など、多くのポジティブな要素に支えられ、力強い成長を続けています。今後、業界が高性能でエネルギー効率の高いソリューションへ移行していく中で、Armのテクノロジーとエコシステムは、その中心的な役割を担い、デジタル変革を牽引していくことが期待されます。
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